2017年11月25日土曜日

おカネの流れ:その3

本記事の要旨


・おカネの流れ図
・賃金が繋ぐおカネの循環
・ボトルネックとしての賃金
・ベーシックインカムによる購買力調整
・生産能力=購買力を基本に


おカネの流れ図

本記事は「おカネの流れ:その2」の続きです。
おカネ(請求権証)の発行や分配の流れを表す試みです。
今回使用する図は前回と若干の変更がありますが、大枠は同じなので変更内容の説明は省きます。
図の読み方は上から【通貨発行】に始まって下の【需給ギャップ】を目指します。
おカネの流れを追いかけるだけでなく、おカネが不足しているのか過剰なのかという判断が重要と考えてこのようになっています。


おカネの流れ図

前回までの話
【債務通貨システム】(準備預金制度)が存在することによって、おカネは基本的に民間銀行からの利子付きの借り入れで発生する仕組みになっているということでした。
図では【債務通貨システム】の破線で囲まれた部分、その中でも主に【民間借入】と【国債発行】(政府借入れ)によっておカネが発生していると考えられます。
利子が発生しない【通貨発行】の方法としては政府が発行する【政府貨幣】や、国債を中央銀行が引き受けてしまう【中銀引受】があります。

賃金が繋ぐおカネの循環

発生したおカネが【民間事業】と【公共事業】に投入されることによって、【投資】と【賃金】におカネが流れていると考えられます。
図でも表現していますが、今の【消費】(生産物の分配)のためのおカネの多くは、ほぼ【賃金】を経由して流れています。

【消費】に繋がっているのは【賃金】

【購買力】の大部分は【消費】ですから、【消費】に繋がるほとんど唯一の要素である【賃金】が【購買力】を支えていると言っていいと思います。
実際に大半の人は【賃金】が無ければ生活できないと思います。


ボトルネックとしての賃金

【賃金】は労働力という商品の値段ですから、基本的には労働力への需要と労働力の供給のバランスによって決定されると考えられます。
つまり雇用側がどれだけ【賃金】に払えるか(需要)と、どれだけの労働力が【賃金】を求めて参加しているか(供給)のバランスによって大枠が決まると考えられます。

単なるおカネ不足でも労働力需要は減少すると考えられます(循環するおカネと共に、その経路である【賃金】を通るおカネも減るからです)が、他に減少する要素として無人化や省人化の技術があると考えられます。
つまり【賃金】としておカネを払うよりも機械等の無人化技術に【投資】したほうが生産性が高い場合、【賃金】に流れるおカネは減少し低下圧力を受けることになると考えられます。

以下の図で表現しているように【投資】が増加しても【賃金】が減少すれば【消費】=売上も減少すると考えられますから、利益の回収が難しくなると考えられます。
これは所得が【賃金】に限定されていることがボトルネックになっていると考えられます。

生産性向上のはずが【賃金】がボトルネックになって売上にならない

近年の実際の出来事として無人工場や無人物流センターの現場投入、無人運転等の研究などがあり、無人生産技術が着実に発達している印象を受けます。
それら生産機械のコストパフォーマンスが上がれば上がるほど、【賃金】だけに所得を頼っている人々はより安く労働力を提供しなければ【賃金】を得られなくなると考えられます。
このことは低賃金重労働、貧困等のおカネがないことによる問題と深く関わっていると考えられます。


ベーシックインカムによる購買力調整

解決策としては【BI】(ベーシックインカム、国民配当)の導入が有効と考えられます。
【BI】は無条件におカネを恒常的に全員に給付することです。
図のように【公的支出】から【BI】による通貨供給のルートを新設します。

【BI】による【購買力】調整

【購買力】の不足を補うためには【通貨発行】や【ストック税】で循環通貨を増やす必要があると考えられます。
このことは何かと気をつけておく必要があると思いますが、ともかく【購買力】不足が解消した時に考えられることは以下の通りです。


  • 【消費】(生産物の分配)が実現(貧困の解消)
  • 労働市場の需給の偏りが解消(働かないという選択肢が出現)
  • 生産物の売上が増加(生産性の向上が報われる)
  • etc...

人々は市場に売り手側として参加するのもしないのも自由ですし、おカネを使って欲しいものを買ったり色んな活動に参加してみる自由も増えると考えられます。
噛み砕いて言えば、おカネも時間もあったらこうしたいな、というのが実現しやすくなるということだと思います。

生産能力=購買力を基本に

いわゆる「何を財源とするか」や「どこまでやるか」の考え方ですが、【生産能力】(ここでは実際の生産量とは関係ない、全ての生産資本がフル稼働した状態の生産力です)と【購買力】が釣り合う状態(【需給ギャップ】ゼロ)を目指すのが基本と考えます。
調整方法としては【生産能力】に対して【購買力】が不足していれば【通貨発行】や【貯蓄】への課税など(【ストック税】)、逆に【購買力】が過剰なら消費税など(【フロー税】)を採用するといった具合です。


【需給ギャップ】は【生産能力】と【購買力】のバランスのこと

今は【生産能力】が増大中で【購買力】が不足していると考えられますから、おカネの調達は【通貨発行】などで拡張的に行えばいいと考えられます。
【購買力】が保障されることで【貯蓄】への流れも緩んだり、逆に【貯蓄】されたおカネが【消費】や【投資】に向かう作用も期待できると考えられます。

毎年の目標としては物価上昇率の活用(インフレターゲット)も有効と考えられます。
物価上昇率が一定未満なら【BI】を増額し【購買力】の増加を加速させ、一定以上なら増額は一時ストップないし減額して【購買力】を調整するといった考え方です。
いずれにしろ通貨量の増減を【生産能力】に紐付けて自動的に調整してしまうような仕組みが望ましいと考えられます。