2018年1月5日金曜日

2つの需要と2つの供給

本記事の要旨


・2つの需要、2つの供給
・需給に関する3つの視点
・需給から考える今後


2つの需要、2つの供給

今回は需要と供給についてざっくりと整理してみます。
需要は欲求、供給は商品供給と読み替えてもいいかと思います。
商品の値段は需要と供給によって概ね決まっていきます。

例えば賃金労働者として所得を得ている人も、労働力を提供するという「供給」側として明確に参加しています。
ですから賃金が総じて上がらないといった場合、供給側の労働力が足らないというよりは、労働力への需要がなくなったのではないかと考えることも出来ます。
それには例えば機械化による無人化・省人化も関係してくるでしょう。

そのような需要と供給ですが、整理すると以下の概念図のようになると考えられます。

需要と供給

中央の二重の円は、2つの要素が微妙な差で重なり合っていることを表現しています。
どちらが大きいか小さいかは場合によります。
では要素を一つずつ見ていきます。

潜在需要(∞)

持っているおカネに関係ない需要です。
一応限りがないと仮定しています。


潜在供給力(分配可能な富、潜在GDP)

ここでは生産資本(生産手段)をフル稼働した場合に商品を供給できる力のことです。
有効需要の拡大によって分配が可能になると考えられます。

有効需要

おカネの裏付けのある需要、つまり購買力のことです。
いわゆる物価に関係するのはこの有効需要と考えられます。

実際の生産高(GDP)

購買力を見越して生産され、実際におカネで取引された価値(商品)の総額です。
有効需要との関係によって物価が上下するのではないかと考えられます。


需給に関する3つの視点

前項の2つの需要と2つの供給を組み合わせると、いくつかの需給に関する視点が得られます。
ここでは以下の3つにまとめてみました。


有効需要×実際の生産高(GDP)

図では中央の二重の円の部分です。
投資や消費に使われたおカネによって、実際に取引される生産量も決まってくると考えられます。
いわゆる物価下落としてのデフレも、有効需要の低下や商品供給の過剰が関係してくると考えられます。

有効需要×潜在供給力(分配可能な富)

図では概ね紫の部分です。
デフレギャップという言葉は、少なくとも本ブログで使う場合にはこの組み合わせにおける有効需要の不足分のことです。
ですから生産余力(デフレギャップ)が存在しても、有効需要の拡大に実際の生産が追いつかず物価が急激に上がるということはありえると考えます。
ただし生産は今でも過剰気味ですし、有効需要の拡大はスムーズに生産量の拡大に吸収されるということもありえると考えます。
どちらにせよ段階的に様子を見ながら有効需要の拡大を行い、その指標として物価目標を設けておけばいいのではないかと思います。

潜在需要(∞)×実際の生産高(GDP)

潜在需要(∞)×潜在供給力(分配可能な富)

おカネ不要で市場から何を持っていってもいいとしたら、いくら供給力があっても不足すると考えられます。
しかし実際の生産高(GDP)は多くの場合おカネの裏付けのある需要(有効需要)に沿って変動してきましたから、潜在的なものも含めた供給力そのものが不足するということは特殊な場合を除いてあまりないと考えられます。

有効需要とは言い換えれば富の分配力です。
供給力(商品)があっても分配力(おカネ)がなければ富を受け取ることは出来ません。
それがいわゆる「豊穣の中の貧困」であり、おカネ不足でありデフレです。
需要といってもここでいう潜在的な需要と有効需要は違うということです。


需給から考える今後

以下は今回整理してきた需給についての考えに加えて、筆者がネットなどで見かけてこれはよさそうと思った対策などを放り込んでみた図です。


つまり?

所得が賃金に限定されているために分配されない富(潜在供給力)があるので、おカネを直接給付(国民配当)して分配するのがいいと考えられます。
その際には通貨発行と直接給付などで確実に有効需要を増やすとともに、おカネの量と物価に目標を設けることで、安定的なコントロールの目安とすればいいと考えられます。

k%ルール

k%ルールは市中のおカネの量(マネーストック)を毎年k%(kは諸条件で変動)増やそうという考え方です。
市中のおカネの量(マネーストック)と経済成長、給料との関係についてはこちらの記事等を御覧下さい。
市中のおカネの量を毎年例えば5%増やそうとしたら、確実なのは同額の公的支出を新規通貨発行で毎年行うことです。
それを国民配当で通貨供給すれば有効需要もある程度増大すると考えられます。


インフレターゲット

インフレターゲットは物価上昇率を例えば年3%付近に収めようというようなものです。
もし潜在供給力を有効需要が決定的に越えるようなこと等があれば、物価は目標を超えて上がり続けると考えられるので、そのような場合は直接給付の増額停止(あるいは減額)や税などで有効需要を抑える方向に転換が可能と考えられます。
もちろんデフレギャップが存在していても急激な物価上昇が起これば、それを抑えるために同じような方法を取ることが予想されます。

100%マネーで財政金融一体化を

アーヴィング・フィッシャー博士らも賛成した100%マネーを導入すると、これまで別々に行っていた財政金融政策を一本化することが可能になります。
特に通貨供給として国民消費者への定額分配を行うなら公平性に優れていますしし、市場原理とも矛盾しないと考えられます。
銀行貸出としてのおカネの創造を停止することになるため、通貨発行のための国債も不要になりますし、バブルの危険性も非常に小さくなると考えられます。