2018年6月28日木曜日

経済と水道



目次
  • 経済と水道:蛇口から水を出したい時は
  • 現 状 認 識:ボトルネックは蛇口か給水能力か
  • 解 決 策:蛇口を開くために



まとめ

 この記事では経済を水道に例えた上で、「供給能力過剰・有効需要不足」と、通貨収入を労賃に限定したときに問題になる「技術的失業」という現状認識、そしてそれらに基づく「通貨発行と国民配当」という解決策に触れています。噛み砕いて言えば「水を出すために蛇口を開こう」です。




経済と水道:蛇口から水を出したい時は

 下の図は水道と蛇口から出る水、そして受け皿を表現しています。水を供給し続ける能力を給水能力と呼んでいます。蛇口は開こうと思えば無限に大きく開くことが出来ると考えてください。

 出てくる水を増やしたい時は蛇口を開けます。しかし蛇口の開きが給水能力を超えるようなら、それ以上開けても出る水は増えません。逆に給水能力がいくらあっても、蛇口を開かない場合は出てくる水を増やすことは出来ません。このように出てくる水の流量を決めているものは給水能力と蛇口のどちらか小さい方です。図の右側にその例を入れました。
 この構図を経済に当てはめてみたものが下の図です。モノやサービスは通貨単位で測ります。

用語の説明
  • 供給能力⇔モノやサービスを供給する能力(生産能力)
  • 富の分配⇔モノやサービスが通貨の支払いを通じて分配されたということ
  • 有効需要⇔通貨(請求権証明)の支払い量
  • 需 要 ⇔通貨の支払いを伴わない潜在的な需要


 考え方は水道の図と同じで、図の右側にその例を載せました。分配される富の量を決めているものは、モノやサービスを供給する能力(供給能力)か通貨の支払い量(有効需要)のどちらか小さい方であると言えます。色々穴はあるかと思いますが、先述の水道と似たような関係と言いたいのかと汲み取ってもらえれば助かります。




現状認識:ボトルネックは蛇口か給水能力か

 実際の経済のモノやサービスの値段などから、供給能力と有効需要のどちらが小さい(分配のボトルネックになっている)かを考えてみます。商品供給が購買力(通貨の支払い)より少なければ値段が上がり、購買力より多ければ値段が下がる傾向があります。実際の商品供給量は生産設備の稼働率などで有効需要に沿うよう細かく調整されていると考えられますが、供給能力に余裕があるうちは値段も大きく上がらないと考えられます。

 例えば労働市場では賃金が低い(上がらない)という現象がありますが、そこから労働力の供給が人件費に対して慢性的に過剰な状態と推察できます。もし労働供給の不足が起きているのであれば、賃金も上がると考えられます。その他の商品市場でも安価な商品への需要が本格的に高まってから久しいですが、そもそもそういった売り方が出来るのは供給能力に余裕があるからと考えられます。

シャッター商店街の意味

 いわゆるシャッター商店街のようなところはなぜ長くシャッターを閉めているのかという考察です。今が供給能力が購買力に対して不足している状態と仮定すると、商品を作れば作るほど売上が増える状況と言えます。そのような状況では倒産や遊休ではなく、通貨は貯め込まず先行投資して供給能力を強化していく方を選ぶ企業が多いかと思います。倒産・遊休しても、商品の買い手や投資先を求める人は余るほどいますから、すぐに土地や設備等も別の形で活動を再開すると考えられます。 ですから供給能力が不足しているなら、シャッター商店街が現状ほど増えるとは考えにくいです。消費者に十分な購買力がないため、満足に売れないからシャッターを閉めている(貯蓄の取り崩しを選ぶ)のではないかと考えられます。


不足は蛇口(有効需要)

 以上のようなことを考えて、現状を供給能力過剰、有効需要不足だろうと判断しています。供給能力に対して消費者の購買力が弱いことが、現状に影響を与えている主要な要素であると考えられます。







解決策:蛇口を開くために

消費者に通貨(請求権証明)を分配する方法

 富の分配を増やすためには、有効需要(通貨の支払い)が供給能力と同等まで大きくなるように、消費者に通貨を分配すればいいと考えられます。そのルートは賃金と直接給付が考えられますが、購買力を調整する目的の場合は直接給付が望ましいと考えられます。その理由は、市場の良いところが消費者の需要に合わせて供給形態が適応することだからというのもありますが、技術的失業もあります。

技術的失業:自動化によって人力(人件費)が不要に

 技術的失業は生産技術の進歩(効率化や無人化)によって起こる、失業や低賃金化のことです。そうなる理由は企業が生産活動のために手持ちの通貨を支払う際、労働力よりも安価で高性能な自動機械等があればそちらに通貨の支払いを当てるからと考えられます。こうしたことが様々な業種で起こる結果、労働市場では労働供給の過剰と低賃金化が進んでいくと考えられます。現状では賃金が生活費の全てと言って過言ではない(そもそも公共事業しか現在は基本的に通貨供給手段がない)ですが、必ずしも生産に人が必要なわけではないのは無人工場などを見てもわかるかと思います。

 低賃金は現状では低購買力に直結しますから、消費者は貧苦や少子化に陥ることになりますし、コストが浮いたと喜んでいた企業も、結局は売上の低迷に悩むことになると考えられます。なら技術の導入をやめればいいかというと、そもそも現在の生活を支えているのが、そうして導入されてきた数多の技術ですから難しいと思います。それよりも通貨の賃金分配の限界を認識し、それを補うための方法を考えたほうが建設的かと思います。

解決策:通貨(請求権証明)を発行して分配する

 問題は供給能力は強化されていくのに、一方で消費者の購買力が弱化して富の分配に異常が起こることにあると考えられます。これは賃金だけに通貨収入を限定することで起きますから、供給能力と有効需要(購買力)のギャップを埋めるために通貨発行と全国民への定期給付を行えばいいと考えられます。この施策を国民配当(ベーシックインカム)などと呼びます。

財源と目標の枠組み

 不足した有効需要(通貨の支払い)を補うことが主な目的となるため、財源は基本的に有効需要を抑制しない通貨発行や貯蓄等への税になります。有効需要を抑制する消費等への税に置き換えたり増額停止や減額を行う必要があるのは、供給能力を有効需要が超えた場合や物価が異常に高まった場合と考えられます。その判断のために、物価目標やk%ルール(通貨量の増加率に関するルール)なども導入すればいいと考えられます。通貨発行と直接給付によって心配される過度なインフレのリスクは、こうした枠組みの設定によって克服可能と考えられます。