2017年8月26日土曜日

おカネの流れ:その1

本記事の要旨


・おカネの流れ図

・債務通貨システム(部分準備制度)
・国債の中央銀行直接引受け
・量的緩和


おカネの流れ図

おカネの発行や分配の概況を視覚的にまとめたものがあると、おカネの流れをより直感的に理解しやすいのではないかと思います。
今回はそれを目指して、おカネの流れ図のようなものを作りました。


流れ図の見方
上の通貨発行からスタートし、下の方にある【購買力】(有効需要)と【生産能力】(潜在GDP)の比較からなる【需給ギャップ】を一応のゴールとしました。
需給ギャップが0に近いほどよりよい通貨政策と考えられます。

おカネの発行や分配の流れを矢印で示していますが、両端に矢印があるのはどちらの流れもありえます。
【民間事業】↔【民間借り入れ】、【国債発行】↔【公的支出】などは貸出と返済という2つの方向があり、【需要】↔【貯蓄】も同様に貯蓄する方向もあれば切り崩す方向もあります。
【国債発行】↔【中銀引受】は国債の買いオペと売りオペのことですが、これについては本記事の最後の「量的緩和」の項で説明します。


おカネの流れ


マスの色は黄色が従来的な利子発行・賃金分配、赤色が需要抑制的なもの、青色は無利子発行・BI(直接給付)としています。
マス同士を破線で結んでいるものは、現在その機能が制限されているもの(【政府貨幣】)や未採用のもの(【BI】)です。

破線で囲んだ範囲は一つのグループとして捉えられると考えたものです。
【債務通貨システム】、【生産】、【需要】、【税】のグループが考えられます。
【需要】にある要素のうち【賃金】【BI】そのものは厳密には需要になる前の要素ですが、これらが十分に増えれば購買力も増えるだろうということでグループ化しています。

通貨発行BI
最初に結論として私が認識している通貨発行BIのルートを図示します。
なぜこう主張するかの理由は各要素の説明が一通り済んでから改めて述べたいと思います。

通貨発行BI

債務通貨システム(部分準備制度)

【債務通貨システム】(部分準備制度、銀行制度とも)は銀行が政府・企業・家計に貸し付けることで市中のおカネが発生するシステムです。
言い換えるとおカネの供給が銀行の貸出に全面的に依存するシステムです。

【国債発行】(【中銀引受】もほぼ同じ意味)や【民間借入】によって銀行がおカネを発行する手続きを信用創造と呼びます。
信用創造によって発生したおカネを信用通貨とか債務通貨と呼びます。
このおカネは銀行預金(要求支払預金)として発生するので預金通貨とも呼びます。


債務通貨システム(部分準備制度)

信用創造は利付き債務としておカネを発行するということなので、基本的に借り手(企業・家計・政府)には【利払い】債務、貸し手(銀行)には利子収入が発生します。
債務として発行されるおカネは債務を返済すれば消滅します(信用破壊)。

信用創造と信用破壊はセットですが、これを全体として見た時に総量が増えることを信用膨張、総量が減ることを信用収縮と呼びます。
信用創造のメカニズムや【債務通貨システム】が抱える問題については別の機会に触れますが、末尾の参考書籍で詳しく扱っているのでどちらかというとそちらをおすすめします。


国債の中央銀行直接引受け

【中銀引受】の要素は流れによって少し違う意味になりますが、ここでは国債の中央銀行直接引受けです。
【債務通貨システム】(部分準備制度)では利付債務としておカネが発行されるので、【利払い】が発生します。

しかし中央銀行が政府から国債を引き受けておカネを発行した場合は、同じ政府組織内の出来事なので【利払い】を無効化できるとされています。
具体的には中央銀行が利息を受け取ると国庫に収める必要があるということだそうです。
よく財政ファイナンスと呼ばれます。


国債の中央銀行直接引受


量的緩和

最近話題(?)の量的緩和について触れて一度区切ります。
【国債発行】で市中銀行が保有した国債を【中銀引受】で中央銀行が買い取ることを買いオペレーションと呼びます。
逆の流れが売りオペレーションです。

買いオペの一般的な目的は金利(図では【利払い】)を下げることによる信用創造の促進です。
ですから金利がある程度下がるとそれ以上は止めるのが従来の買いオペですが、量的緩和という時は金利に関係なく買いオペを続けます。


量的緩和

国債の中銀引受の項で述べたように、【国債発行】は利払いが発生しますが【中銀引受】で国債が中央銀行へ移動すると利払いが無効化されます。
量的緩和は順序や時間の違いはありますが中央銀行の国債直接引受と似ていて、政府の債務負担が減ると考えられます。