2017年7月25日火曜日

デフレの影響:貧困

本記事の要旨


・デフレは貧困をもたらす
・デフレは戦乱をもたらす
・通貨発行BIは生産過剰時代最大の貧困対策

デフレは貧困をもたらす

ここで言うデフレは生産能力に対する消費者への通貨供給の不足のことです。
生産能力が消費者の購買力より過剰だと労働力余りが起きますから給料は下がります。
これは機械生産などが増加しても同様と考えられます。

現在の消費者は賃金だけで所得を得ているためにデフレでは購買力が低下していきますから、これを放置すれば生産能力が十分あったとしても富(生産物)の分配が機能せず貧困が広がっていくと考えられます。

貧困というキーワードでメディア等で取り上げられたものは子どもの貧困や女性の貧困、ワーキングプア(貧困労働者)、就職氷河期といったものがありますが、これらの現象は全てデフレが関係していると考えられます。

デフレは若年層の生活を中心に破壊する
生産過剰で需要が足りないということは企業にとっては生産物が売れにくいということと考えられます。
デフレではそのように企業も追い詰められるために職務経験の豊富ないわゆる即戦力をより安く求める傾向が強くなると考えられます。

消費者が労働者でもあるという現在の経済システムを踏まえればそういった人件費の削減で利益を求めようというのは無理のある話だと理解できますが、デフレでは大なり小なり企業は経費削減の方針を取らざるをえないのも事実だと思います。

ここでより大きな影響を受けるのは新社会人など職務経験の浅い傾向にある若年層の人々と考えられます。
中途採用になるとある程度の職務経験が問われることが多いため、職歴に乏しい労働者はいい条件の労賃契約を取ることが難しくなると考えられます。
仮に就職できてもデフレで労働力過剰の状況は変わりませんから、こうした人々は総じて少ない所得で生活することになると考えられます。

「若者の○○離れ」が話題の流行だったことがありましたが、その問題の全容はデフレで若年労働者におカネが回ってこないということ(ワーキングプア)だと思います。
もし十分な所得がありエネルギーを生存以外に費やしても問題ないとか、失敗しても次があるというような安心感があれば、人は自ずから様々な活動に励むようになるのではないかと思います。

デフレが次世代層を細らせている
おカネが無ければ富の分配を受けることが出来ず貧困になります。
そうなれば子供を生むのもためらうこともあるでしょうし(少子化)、子供がいる世帯は子育ての経費を切り詰めざるを得なかったり(子どもの貧困)、女性は高報酬でリスクの高い仕事でおカネを調達する必要に駆られることもある(女性の貧困)と考えられます。

高報酬の仕事などで貧困から抜け出せればまだいいのですが、デフレというのは生産過剰ですから人余りです。
どんな労働市場でも労働力の供給が過剰になっていく傾向は変わらないと考えられます。
そうすると報酬はどうしても下がっていきます。

そういった背景を誰もが背負わざるをえない以上、不利な契約を結ばざるをえなかったり、過重労働が当然であると思い込んで健康や自由を失ったりして、最悪過労自殺を選ぶような場合も当然多くなると考えられます。

消費者の購買力が不十分なまま、日々増大する機械生産能力や他の労働者とのコスト切り詰め競争を強いられている以上、貧困は避けられないと考えられます。
賃金以外の通貨の給付を認め、新たに通貨を発行して流し込むことが必要と考えられます。

デフレは戦乱をもたらす

貧困は個人にとっても死活問題ですが、社会的にも様々な致命的な問題をもたらすと考えられます。
貧困は教育格差による格差の固定化や余裕のない暮らしから起こる家庭問題、治安の悪化などをもたらし、より深刻になれば過激思想やテロリズム、犯罪組織の温床にもなると考えられます。

これが広範囲に広がってくると世情がいよいよ不安定化して戦乱が起きると考えられます。
例えば1930年頃の世界的なデフレ恐慌から二次大戦への流れがそのような流れだったと考えられます。

当時の通貨システムは銀行主導の金本位制というもので、金の量に通貨量が縛られるシステムでした。
従って当時は十分な通貨を供給できず、デフレや緊縮財政を国民に押し付ける結果をもたらしていました。
ここで既に慢性的かつ大きな失業問題があったと考えられます。

そこにアメリカ発の巨大なバブル崩壊が発生したため通貨量が激減し、デフレによる失業問題がさらに深刻化したと考えられます。
当時の失業率は20%を超えていたらしく、労働者の扱いはひどかったようです。
日本の東北では凶作もあって飢餓が発生し、これが2.26事件(青年将校によるクーデター未遂)の一因になったとも言われています。

そして各国の軍事政権の台頭などを経て世界大戦が再び起きます。
戦争は巨大な需要(戦争特需)と考えられますから、デフレによる生産過剰のはけ口にはある意味で適していたと考えられます。
過剰生産力を受け入れる戦争特需が好景気の要因の一つとも考えられます。

通貨発行BIは生産過剰時代最大の貧困対策

デフレは生産能力に対する消費者への通貨供給の不足から生じます。
現在は基本的に労働力を売ることでしか大部分の消費者が通貨を得ることはできない仕組みですから、これでは無人生産の時代への対応は難しいと考えられます。

デフレで過剰な生産力があるということは労働者にとっては競争相手がとにかく一杯いるということですから、労働力を高く売ることがなかなか出来ません。
無人生産も拡大していくと考えられますから、労働者が得られる報酬は長期的に少なくなっていく傾向が続くと考えられます。

新たに十分な量の通貨を発行するのも勿論ですが、通貨の供給ルートとして直接給付(BI)の形を取り入れていくことが必要と考えられます。
通貨発行とBIによる消費者への通貨供給は余剰生産能力を貧困層の人々に分配させることを可能にしますから、貧困は減少すると考えられます。

それと同時に購買力の増加により企業は儲けが増え、労働者はよりよい労働環境と報酬で働くことができると考えられます。
基本的にどんな立場にとっても今以上の得しかないと考えられます。

子供は飢えることが少なくなり、消費者は生活物資が買えるようになれば無理に働かなくてもよくなると考えられます。
親子の時間も増やすことが出来るでしょうし、子育てが負担ならサービスを利用して軽減することも可能になると考えられます。

働かなくてもいくらか生活できるとなれば身体的にも精神的にも楽だと思います。
生活の心配なく休養もとれますし、気力体力が充実すれば今まで目が向かなかったものに興味をもつこともあるのではないかと思います。