経営者がする主張に「コストカットで社会問題、特に貧困問題を解決しよう」というものがあります
志にケチをつけるわけではないですが、ここでは「現行社会システムで」コストカットは貧困問題の解決にはならないという指摘をし、加えて社会問題の解決に寄与するであろう新しい視点を提案したいです
コストカットの対象として人件費があることは周知の事実です
企業は人手不足と言いながらより高い報酬で人手を買うでもなく、ロボット化をすることで「人手不足」を解決しています
実際、自動化システムを売る会社は「人手不足の解消にロボットを」というプレゼンをしているのですが、こじらせた私は野暮なことにロボットは「人手」じゃないでしょとツッコミを入れずにいられません
そもそも「生産能力の不足」とでも言うべきで、それすら深掘りすれば「生産能力を用意するための十分な売上がない」のが実態ではないでしょうか
ともかく市場参加する企業はそうして自動化で人件費を削って消費者需要に応えながら競争に勝とうとしているわけです
別に間違ったことはしてません
しかし、間違っていないからといって問題が存在しないとは限りません
需要側に注目してみるとどうでしょう
消費者が払うおカネはどこから流れてくるか? 企業が削るのに熱心な人件費です
このことを考えるに、コストカットによって貧困問題を解決する試みは、人件費が削られて貧困に陥る人々に対して、さらに人件費を削って貧困に陥らせるという奇妙なことになります
特に企業は間違っていないのに問題が存在しているわけです
このような現状を検討した時、貧困をもたらす根本原因は消費者が払うおカネを企業経営の人件費だけに依存する「社会システムの設計」にあると判断できます
コストカットをがんばる企業や失業で切られる消費者側ではないということです
冒頭で「社会問題の解決に寄与するであろう新しい視点を提案したい」と言ったのはこのことです
こうしたシステム思考を使わないと「社会問題なんてない、すべて自己責任だ」とか「雇用を守らない企業が悪い」とか、システムではなくプレイヤーから犯人探しをしがちで、問題の核心となっているシステムは野放しになります
コストカット、ロボット化は避けられないことですから、おカネを発行して直接消費者に渡すようにするしかありません
そうしなければコストカットするほどに貧困は進みます
最後に書籍を紹介しておこうと思います
「最強のベーシックインカム」駒田朗(のらねこま)
わかりやすく、今もたまに読み返しています
「毎年120万円を配れば日本が幸せになる」小野盛司・井上智洋
高精度な経済モデルで試算を行っています
「ベーシックインカムの誤解」蝙蝠
Amazon kindleで無料のマンガですがわかりやすいです