2017年7月18日火曜日

富の分配の上限

本記事の要旨


・デフレでは消費者への通貨供給(需要)、インフレでは生産能力が富の分配の上限
・デフレでは消費者への通貨供給(BI)強化、インフレでは生産強化を行う
・賃金だけによる需要創出の限界とBIの役割

デフレでは需要が、インフレでは生産能力が富の分配の上限

下の図は消費者への通貨供給(需要)と生産能力、そして富の分配の関係についてのイメージです。
赤い○が消費者への通貨供給(需要)の大きさ、青い○が生産能力の大きさ、黄色は実際に分配される富(生産財)の大きさ、青色の塗りつぶしは生産余剰(デフレギャップ)の大きさ、赤色の塗りつぶしは需要余剰(インフレギャップ)の大きさを表します。
この図の3つの例では生産能力は全て同じ規模で、消費者への通貨供給の大きさ(需要=購買力)だけが違います。
理想的なのは一番上の図、生産能力が最大限に分配され、なおかつ消費者への通貨供給の過不足が小さい状態だと考えられます。

インフレギャップ(消費者への通貨供給>生産能力)
インフレギャップが存在する状態では、その大きさに関わらず富の分配は最大化されると考えられます。
この状態では生産能力の上限が分配できる富の上限ですから、これ以上通貨供給しても更なる富の分配は出来ないと考えられます。
富の分配を増大させるには生産能力の強化が必要と考えられます。

デフレギャップ(消費者への通貨供給<生産能力)
デフレギャップが存在する状態では、消費者への通貨供給(需要)の大きさで富の分配が制限されると考えられます。
この状態では通貨供給の大きさが分配の上限になっているので、生産能力を強化しても更なる富の分配は出来ないと考えられます。
富の分配を増大させるには通貨供給の増大が必要と考えられます。

この図では生産能力は全て同じ大きさですが、デフレギャップが存在する状態だけが消費者への通貨供給(購買力)の不足によって本来の生産能力未満まで富の分配の大きさを抑え込まれていることが確認できます。

インフレでは生産強化、デフレでは消費者への通貨供給を

消費者への通貨供給と生産能力が両方増大して初めて富の分配が増大すると考えられます。
ですから施策の方針としてデフレでは消費者への通貨供給の増大を採り、インフレでは生産能力の増大を採るのがいいと考えられます。

消費税はインフレギャップ発生で初めて出していい選択肢
消費税は消費者への通貨供給(需要)を縮小させることと同じなので、インフレギャップ(需要余剰)が存在する時に需要の増大を抑え込むのには適しているかもしれませんが、デフレギャップ(需要不足)が存在する状態で導入すれば富の分配が小さくなってしまうと考えられます。

実際に個人消費などは消費税の導入や増税によって下がっていることが確認されていますから、現状の日本国経済に消費税は全く必要ないと考えられます。
これ以上の増税を凍結するのは勿論、一刻も早く減税か廃止をすべきだと思います。

現在のデフレの進行とBIによる解決のイメージ

下の図はデフレが進行した状態とその解決のイメージです。
凡例などの読み方は先程の図と同じです。
一番上の図ですが、デフレギャップが存在する状態では消費者への通貨供給(需要)が富の分配を制限しています。
ここから生産能力だけ増大した状態がデフレが進行した二番目の図の状態と考えられます。

この時GDPなどを見ると経済的な規模は変わっていないように見えると思います。
消費者への通貨供給(需要)の大きさがボトルネックになっており、ほとんど変わっていない状態だからです。
AIが管理する無人工場などが登場しているのに生産能力が増大していないということは考え難いと思います。

消費者への通貨供給の規模がそのままで生産能力が増大すれば、その分デフレギャップが増大します。
デフレギャップの増大は貧困等の問題の深刻化を意味すると考えられます。

この解決には通貨発行BIによる消費者への通貨供給が適していると考えられます。
大事なのは生産能力に合わせて消費者への通貨供給を調整することです。

賃金による需要創出の限界とBIの役割

AIが管理する無人工場など、生産能力増大と人件費削減を両立するような生産技術が発達しています。
賃金経由の通貨供給だけではデフレギャップを埋めることが困難になっていくことが予想されます。

その問題とBIによる解決のイメージを下の図で示してみました。
読み方は前の図と同じですが、ここでは生産能力を無人生産能力と有人生産能力というものに分けています。
賃金コストを払ってするような生産を有人生産、それ以外の生産を無人生産としました。
賃金による富の分配の限界
上の図ですが、賃金だけで分配を行う場合は無人で生産される富の分を分配することが出来ませんから、賃金による消費者への通貨供給の限界は有人生産能力の大きさ以下ということになると考えられます。

純粋に人にしか出来ない富の生産がこの先どれ位あるのかはわかりませんが、人による生産の大きさは無人生産によって今後押し下げられていくと思います。
相対的に無人生産能力が増大するだけでなく、有人生産も代替していくからです。

この場合、無人生産能力が増大し続ければそれだけでデフレギャップが拡大します。
賃金経由だけで通貨を注ぎ込んでも無人生産分のデフレギャップの解決は極めて困難と考えられます。

BIによる富の分配とデフレの解決
デフレの解決には無人生産分の富を分配できるだけの消費者への直接の通貨供給が必要と考えられます。
これは需要創出に即効性があるだけでなく、賃金による消費者への通貨供給の限界を解決するためです。

この無人生産分の富の分配がBIの主な役割だと思います。
通貨発行BIによって消費者へ直接通貨を供給し需要を増大させることで、デフレギャップ分の富を分配することができるようになると考えられます。
無人生産が有人生産を代替していく結果、技術的失業によって人件費が下がっていくことがあってもBIによるカバーが可能になります。