2017年12月29日金曜日

おカネは先立つもの

本記事の要旨


・おカネは先立つもの(グラフ)


おカネは先立つもの(グラフ)

本記事では統計を扱います。
下にある図は、以下の前年からの変化(単位:%)の推移をグラフにしたものです。
  • 市中のおカネの量(マネーストックM2:日本銀行)
  • 国内総生産(名目GDP:内閣府
  • 給料(名目雇用者報酬:同上)
グラフにするにあたり、国内総生産の前年からの変化を経済成長と呼んでいます。
調査範囲はマネーストックM2の調査が始まった1968年から2016年までです。
1枚目が元のグラフ、2枚目が筆者が注目した部分をメモ書きしたものです。

グラフ

メモ書きしたものが次のグラフです。

グラフ(メモ書き付き)

一見して関係がありそうです。
大きく変動している部分の頂点と谷に注目してみると、おカネの量であるマネーストックM2()が最初に変化して、その次に名目GDP()、その次に雇用者報酬()に波及するという流れがあるようにも見えます。
以下に各箇所の順番を書き出してみました。

1970年代前半(図左上)の頂点の順番
1972年:マネーストックM2(26.5%)
1973年:名目GDP(21.0%)
1974年:名目雇用者報酬(28.5%)

その後(図左下)の谷の順番
1974年:マネーストックM2(11.9%)
1975年:名目GDP(10.0%)
1978年:名目雇用者報酬(7.4%)

1990年頃(図中央)の谷の順番
1992年:マネーストックM2(0.6%)
1993年:名目GDP(-0.1%)
1995年:名目雇用者報酬(1.6%)

以上で同様の傾向が見られました。
1990年の頂点は一箇所にまとまっていますが、下がり幅はおカネ、名目GDP、雇用者報酬という順番になっているようです。

まとめ
おカネの量、経済成長、給料それぞれの前年からの変化という3つのグラフを並べてみましたが、とても関連がありそうでした。
また、動くのはおカネの量、経済成長、給料の順番ではないかという見方が出来るように思えました。
先立つものはおカネという格言がありますが、今回のことからも概ね同様のことが言えるのではないかと思います。

2017年12月26日火曜日

おカネほしいですか?

本記事の要旨


・おカネほしいですか?
・できます
・求めましょう


おカネほしいですか?

筆者はほしいです。
そしてそれは公的におカネを新しく発行して無条件で全員に配るべきだと考えています。
なぜかというと、そうしなければ経済が崩壊すると考えているからです。

生産性の向上によって機械化と人件費の削減が進むと何が起こるでしょうか。
賃金が低下し、賃金しか所得がない消費者は消費が出来なくなります。
企業は売上が上がらなくなります。
ただ他者との競争に負けることによる死に追われながら、無人化と悪化する低賃金重労働を受け入れるしかありません。

機械がものを作るだけの世界、そこには消費者がいません。
なぜなら消費者が労働の対価としてしかおカネを受け取らなかったからです。
賃金を得るものは正しいから生きており、賃金を得ないものは間違っているから死んだのだという「空気」がそこにはあったでしょう。
ですが消費者が勇気を持っておカネをコントロールし、発行と共に直接皆が受け取るようにしたらどうでしょうか。
皆が富を受け取れます。

そもそもおカネは取引の当事者が作り出したものです。
それを専門に扱う人々が現れ、独占し必要以上に私益を追い求めようとしたことから人間の苦難の一つが始まったと言っても過言ではないと思います。
おカネは消費者がコントロールすべきではないでしょうか。

できます

この問題について取り組んできた人々が一様に指摘するのは、人間が敷いたルール、特にその中でもおカネに関するルールが、誰のものでもない、あるいは皆のものである富を人々が受け取る障害になっているということです。
それは具体的には貸出によっておカネを創造する仕組みであり、おカネの直接給付のない仕組みです。
おカネとは何だという問が昔からありますが、少なくともおカネ自体は商品ではありません。

本来おカネは富を合理的に分配するために発明されたはずです。
それがいつしかおカネ自体と金などの素材を結びつけて、まるでおカネ自体に希少価値があるかのように見せかけたり、貸出と発行を結びつけて不当な利子を取るようになったり、商売や労働によってのみ消費者は所得を得られるといった慣習が形成されるようになっています。
競争の敗者や参加を放棄した者は死を迎えることが当然だという風潮は、奴隷は労働力であって人として扱うのは間違いであるというかつてのそれと大して変わりはないと思います。
ルールの中にしか優劣や勝負は存在しませんが、多くの場合ルール自体の意図的な欠陥は見過ごされます。

おカネのシステムを事実上独占している人々は、利子収入を得るばかりかバブルを膨らましては壊し、そのたびに土地や資産を回収しています。
彼らがダメージを負ったとなれば、その言うとおりに国は税金や国債などの公的資金で救済を行い、その負担は責任の所在がうやむやなまま最終的に消費者へと転嫁されます。
彼らもまたルールを曲げてでも競争の頂点に居座り続けなければならないのだと思いますが、全てを食いつぶした後はどうするのでしょうか。

これを解決するには、この仕組みが持続不可能であることを認識する必要があると考えられます。
つまり貸出と発行が結びつくことによるマネーゲームが経済を今も破壊しており、直接給付がないことで多くの消費者は十分な所得を得られず困窮しているということです。
特に以下の二冊はわかりやすいのでおすすめしています。

のらねこま(2017)『金融緩和の天国と地獄:改訂版: 永久に繰り返すバブルの膨張と崩壊 常識に挑戦する経済論』
のらねこま(2017)『ベーシックインカムの時代が始まる: その理由と財源および導入手順』

求めましょう

今一番おカネを求めなければならないのは消費者だと考えられます。
消費者のすることは、自分に何が必要かを見定めることではないかと考えられます。
労働力の提供だけでは十分な所得を得られない時代になって久しいですが、未だに誤魔化し誤魔化しそのシステムでやってきているという状態だと思います。

機械生産の魅力が労働力の商品としての魅力を上回ることはあれど、それが逆転することはないと考えられます。
例外は、歴史を見る限りでは戦争等で滅茶苦茶になったわずかな期間だけのようです。

筆者作成のおカネの流れの概念図

より少ない資源で大きな富を生み出すことが出来るようになったにも関わらず、現在も労働者数は増加し低賃金重労働が蔓延しています。
賃金によるおカネの流れがやむを得ない事情で滞るならどうしたらいいでしょうか。
それまでとは全く別の発想が必要な時だと考えられます。



文中で未紹介の参考文献
山口薫(2015)『公共貨幣』東洋経済新報社

2017年11月25日土曜日

おカネの流れ:その3

本記事の要旨


・おカネの流れ図
・賃金が繋ぐおカネの循環
・ボトルネックとしての賃金
・ベーシックインカムによる購買力調整
・生産能力=購買力を基本に


おカネの流れ図

本記事は「おカネの流れ:その2」の続きです。
おカネ(請求権証)の発行や分配の流れを表す試みです。
今回使用する図は前回と若干の変更がありますが、大枠は同じなので変更内容の説明は省きます。
図の読み方は上から【通貨発行】に始まって下の【需給ギャップ】を目指します。
おカネの流れを追いかけるだけでなく、おカネが不足しているのか過剰なのかという判断が重要と考えてこのようになっています。


おカネの流れ図

前回までの話
【債務通貨システム】(準備預金制度)が存在することによって、おカネは基本的に民間銀行からの利子付きの借り入れで発生する仕組みになっているということでした。
図では【債務通貨システム】の破線で囲まれた部分、その中でも主に【民間借入】と【国債発行】(政府借入れ)によっておカネが発生していると考えられます。
利子が発生しない【通貨発行】の方法としては政府が発行する【政府貨幣】や、国債を中央銀行が引き受けてしまう【中銀引受】があります。

賃金が繋ぐおカネの循環

発生したおカネが【民間事業】と【公共事業】に投入されることによって、【投資】と【賃金】におカネが流れていると考えられます。
図でも表現していますが、今の【消費】(生産物の分配)のためのおカネの多くは、ほぼ【賃金】を経由して流れています。

【消費】に繋がっているのは【賃金】

【購買力】の大部分は【消費】ですから、【消費】に繋がるほとんど唯一の要素である【賃金】が【購買力】を支えていると言っていいと思います。
実際に大半の人は【賃金】が無ければ生活できないと思います。


ボトルネックとしての賃金

【賃金】は労働力という商品の値段ですから、基本的には労働力への需要と労働力の供給のバランスによって決定されると考えられます。
つまり雇用側がどれだけ【賃金】に払えるか(需要)と、どれだけの労働力が【賃金】を求めて参加しているか(供給)のバランスによって大枠が決まると考えられます。

単なるおカネ不足でも労働力需要は減少すると考えられます(循環するおカネと共に、その経路である【賃金】を通るおカネも減るからです)が、他に減少する要素として無人化や省人化の技術があると考えられます。
つまり【賃金】としておカネを払うよりも機械等の無人化技術に【投資】したほうが生産性が高い場合、【賃金】に流れるおカネは減少し低下圧力を受けることになると考えられます。

以下の図で表現しているように【投資】が増加しても【賃金】が減少すれば【消費】=売上も減少すると考えられますから、利益の回収が難しくなると考えられます。
これは所得が【賃金】に限定されていることがボトルネックになっていると考えられます。

生産性向上のはずが【賃金】がボトルネックになって売上にならない

近年の実際の出来事として無人工場や無人物流センターの現場投入、無人運転等の研究などがあり、無人生産技術が着実に発達している印象を受けます。
それら生産機械のコストパフォーマンスが上がれば上がるほど、【賃金】だけに所得を頼っている人々はより安く労働力を提供しなければ【賃金】を得られなくなると考えられます。
このことは低賃金重労働、貧困等のおカネがないことによる問題と深く関わっていると考えられます。


ベーシックインカムによる購買力調整

解決策としては【BI】(ベーシックインカム、国民配当)の導入が有効と考えられます。
【BI】は無条件におカネを恒常的に全員に給付することです。
図のように【公的支出】から【BI】による通貨供給のルートを新設します。

【BI】による【購買力】調整

【購買力】の不足を補うためには【通貨発行】や【ストック税】で循環通貨を増やす必要があると考えられます。
このことは何かと気をつけておく必要があると思いますが、ともかく【購買力】不足が解消した時に考えられることは以下の通りです。


  • 【消費】(生産物の分配)が実現(貧困の解消)
  • 労働市場の需給の偏りが解消(働かないという選択肢が出現)
  • 生産物の売上が増加(生産性の向上が報われる)
  • etc...

人々は市場に売り手側として参加するのもしないのも自由ですし、おカネを使って欲しいものを買ったり色んな活動に参加してみる自由も増えると考えられます。
噛み砕いて言えば、おカネも時間もあったらこうしたいな、というのが実現しやすくなるということだと思います。

生産能力=購買力を基本に

いわゆる「何を財源とするか」や「どこまでやるか」の考え方ですが、【生産能力】(ここでは実際の生産量とは関係ない、全ての生産資本がフル稼働した状態の生産力です)と【購買力】が釣り合う状態(【需給ギャップ】ゼロ)を目指すのが基本と考えます。
調整方法としては【生産能力】に対して【購買力】が不足していれば【通貨発行】や【貯蓄】への課税など(【ストック税】)、逆に【購買力】が過剰なら消費税など(【フロー税】)を採用するといった具合です。


【需給ギャップ】は【生産能力】と【購買力】のバランスのこと

今は【生産能力】が増大中で【購買力】が不足していると考えられますから、おカネの調達は【通貨発行】などで拡張的に行えばいいと考えられます。
【購買力】が保障されることで【貯蓄】への流れも緩んだり、逆に【貯蓄】されたおカネが【消費】や【投資】に向かう作用も期待できると考えられます。

毎年の目標としては物価上昇率の活用(インフレターゲット)も有効と考えられます。
物価上昇率が一定未満なら【BI】を増額し【購買力】の増加を加速させ、一定以上なら増額は一時ストップないし減額して【購買力】を調整するといった考え方です。
いずれにしろ通貨量の増減を【生産能力】に紐付けて自動的に調整してしまうような仕組みが望ましいと考えられます。

2017年9月4日月曜日

おカネの流れ:その2

本記事の要旨


・おカネの流れ図
・政府貨幣(公共貨幣)
・政府貨幣の中央銀行買取り
・おカネの発生のまとめ


おカネの流れ図

本記事は「おカネの流れ:その1」の続きです。
おカネの発行や分配の流れをより直感的に理解できるように、視覚的に表してみようという試みです。


おカネの流れ

政府貨幣(公共貨幣)

【政府貨幣】は政府が発行するおカネです。
歴史的には銀行中心の【債務通貨システム】(部分準備制度)以前から存在しています。
日本の【政府貨幣】としては「日本国」と刻印された硬貨が流通していますが、「日本国」と印字された紙幣は流通していない(流通しているのは日銀発行の「日本銀行券」)等、現在はいくらかの制限がかけられています。


政府貨幣

市中銀行が発行する預金通貨と政府が発行する【政府貨幣】には、債務(借金)としておカネを発生させるかそうでないかの違いがあります。
【政府貨幣】のことを債務ではないという性質から無利子貨幣、銀行が創造する私的貨幣との対比として公共貨幣と呼ぶこともあります。


政府貨幣の中央銀行引き受け

【政府貨幣】を政府が発行して、それを中央銀行が【中銀引受】で買い取った代金を【公的支出】に使うことです。
【政府貨幣】を流通させることなく財源とする事ができます。
【政府貨幣】を預かる代金として中央銀行はおカネを発行して払い、それを政府が【公的支出】に使います。


政府貨幣の中央銀行買い取り

【政府貨幣】の【中銀引受】も国債の【中銀引受】と同様、【債務通貨システム】を通して無利子でおカネを発生させます。


おカネの発行のまとめ

前回の「おカネの流れ:その1」と今回(その2)で、おカネが発生したり消滅したりすることについて一通り触れてきました。
現在は【債務通貨システム】(部分準備制度)なので、政府や民間が銀行から借金(【国債発行】と【民間借入】)をするとその瞬間におカネが発生(信用創造)して、借金を返済すると消滅(信用破壊)するようになっています。


おカネの発生と消滅

利付債務としておカネが発生すると【利払い】が発生します。
【利払い】を回避できるのは、国債を中央銀行が引き受ける場合と【政府貨幣】を根拠におカネを発生させる場合が考えられます。
こうして発生したおカネは、【民間借入】や【公的支出】を通して市中へ注がれます。


(本記事はその3へ続きます。)


参考書籍
のらねこま『金融緩和の天国と地獄:改訂版』(2017)
山口薫『公共貨幣』(東洋経済新報社,2015)

2017年8月26日土曜日

おカネの流れ:その1

本記事の要旨


・おカネの流れ図

・債務通貨システム(部分準備制度)
・国債の中央銀行直接引受け
・量的緩和


おカネの流れ図

おカネの発行や分配の概況を視覚的にまとめたものがあると、おカネの流れをより直感的に理解しやすいのではないかと思います。
今回はそれを目指して、おカネの流れ図のようなものを作りました。


流れ図の見方
上の通貨発行からスタートし、下の方にある【購買力】(有効需要)と【生産能力】(潜在GDP)の比較からなる【需給ギャップ】を一応のゴールとしました。
需給ギャップが0に近いほどよりよい通貨政策と考えられます。

おカネの発行や分配の流れを矢印で示していますが、両端に矢印があるのはどちらの流れもありえます。
【民間事業】↔【民間借り入れ】、【国債発行】↔【公的支出】などは貸出と返済という2つの方向があり、【需要】↔【貯蓄】も同様に貯蓄する方向もあれば切り崩す方向もあります。
【国債発行】↔【中銀引受】は国債の買いオペと売りオペのことですが、これについては本記事の最後の「量的緩和」の項で説明します。


おカネの流れ


マスの色は黄色が従来的な利子発行・賃金分配、赤色が需要抑制的なもの、青色は無利子発行・BI(直接給付)としています。
マス同士を破線で結んでいるものは、現在その機能が制限されているもの(【政府貨幣】)や未採用のもの(【BI】)です。

破線で囲んだ範囲は一つのグループとして捉えられると考えたものです。
【債務通貨システム】、【生産】、【需要】、【税】のグループが考えられます。
【需要】にある要素のうち【賃金】【BI】そのものは厳密には需要になる前の要素ですが、これらが十分に増えれば購買力も増えるだろうということでグループ化しています。

通貨発行BI
最初に結論として私が認識している通貨発行BIのルートを図示します。
なぜこう主張するかの理由は各要素の説明が一通り済んでから改めて述べたいと思います。

通貨発行BI

債務通貨システム(部分準備制度)

【債務通貨システム】(部分準備制度、銀行制度とも)は銀行が政府・企業・家計に貸し付けることで市中のおカネが発生するシステムです。
言い換えるとおカネの供給が銀行の貸出に全面的に依存するシステムです。

【国債発行】(【中銀引受】もほぼ同じ意味)や【民間借入】によって銀行がおカネを発行する手続きを信用創造と呼びます。
信用創造によって発生したおカネを信用通貨とか債務通貨と呼びます。
このおカネは銀行預金(要求支払預金)として発生するので預金通貨とも呼びます。


債務通貨システム(部分準備制度)

信用創造は利付き債務としておカネを発行するということなので、基本的に借り手(企業・家計・政府)には【利払い】債務、貸し手(銀行)には利子収入が発生します。
債務として発行されるおカネは債務を返済すれば消滅します(信用破壊)。

信用創造と信用破壊はセットですが、これを全体として見た時に総量が増えることを信用膨張、総量が減ることを信用収縮と呼びます。
信用創造のメカニズムや【債務通貨システム】が抱える問題については別の機会に触れますが、末尾の参考書籍で詳しく扱っているのでどちらかというとそちらをおすすめします。


国債の中央銀行直接引受け

【中銀引受】の要素は流れによって少し違う意味になりますが、ここでは国債の中央銀行直接引受けです。
【債務通貨システム】(部分準備制度)では利付債務としておカネが発行されるので、【利払い】が発生します。

しかし中央銀行が政府から国債を引き受けておカネを発行した場合は、同じ政府組織内の出来事なので【利払い】を無効化できるとされています。
具体的には中央銀行が利息を受け取ると国庫に収める必要があるということだそうです。
よく財政ファイナンスと呼ばれます。


国債の中央銀行直接引受


量的緩和

最近話題(?)の量的緩和について触れて一度区切ります。
【国債発行】で市中銀行が保有した国債を【中銀引受】で中央銀行が買い取ることを買いオペレーションと呼びます。
逆の流れが売りオペレーションです。

買いオペの一般的な目的は金利(図では【利払い】)を下げることによる信用創造の促進です。
ですから金利がある程度下がるとそれ以上は止めるのが従来の買いオペですが、量的緩和という時は金利に関係なく買いオペを続けます。


量的緩和

国債の中銀引受の項で述べたように、【国債発行】は利払いが発生しますが【中銀引受】で国債が中央銀行へ移動すると利払いが無効化されます。
量的緩和は順序や時間の違いはありますが中央銀行の国債直接引受と似ていて、政府の債務負担が減ると考えられます。


2017年7月25日火曜日

デフレの影響:貧困

本記事の要旨


・デフレは貧困をもたらす
・デフレは戦乱をもたらす
・通貨発行BIは生産過剰時代最大の貧困対策

デフレは貧困をもたらす

ここで言うデフレは生産能力に対する消費者への通貨供給の不足のことです。
生産能力が消費者の購買力より過剰だと労働力余りが起きますから給料は下がります。
これは機械生産などが増加しても同様と考えられます。

現在の消費者は賃金だけで所得を得ているためにデフレでは購買力が低下していきますから、これを放置すれば生産能力が十分あったとしても富(生産物)の分配が機能せず貧困が広がっていくと考えられます。

貧困というキーワードでメディア等で取り上げられたものは子どもの貧困や女性の貧困、ワーキングプア(貧困労働者)、就職氷河期といったものがありますが、これらの現象は全てデフレが関係していると考えられます。

デフレは若年層の生活を中心に破壊する
生産過剰で需要が足りないということは企業にとっては生産物が売れにくいということと考えられます。
デフレではそのように企業も追い詰められるために職務経験の豊富ないわゆる即戦力をより安く求める傾向が強くなると考えられます。

消費者が労働者でもあるという現在の経済システムを踏まえればそういった人件費の削減で利益を求めようというのは無理のある話だと理解できますが、デフレでは大なり小なり企業は経費削減の方針を取らざるをえないのも事実だと思います。

ここでより大きな影響を受けるのは新社会人など職務経験の浅い傾向にある若年層の人々と考えられます。
中途採用になるとある程度の職務経験が問われることが多いため、職歴に乏しい労働者はいい条件の労賃契約を取ることが難しくなると考えられます。
仮に就職できてもデフレで労働力過剰の状況は変わりませんから、こうした人々は総じて少ない所得で生活することになると考えられます。

「若者の○○離れ」が話題の流行だったことがありましたが、その問題の全容はデフレで若年労働者におカネが回ってこないということ(ワーキングプア)だと思います。
もし十分な所得がありエネルギーを生存以外に費やしても問題ないとか、失敗しても次があるというような安心感があれば、人は自ずから様々な活動に励むようになるのではないかと思います。

デフレが次世代層を細らせている
おカネが無ければ富の分配を受けることが出来ず貧困になります。
そうなれば子供を生むのもためらうこともあるでしょうし(少子化)、子供がいる世帯は子育ての経費を切り詰めざるを得なかったり(子どもの貧困)、女性は高報酬でリスクの高い仕事でおカネを調達する必要に駆られることもある(女性の貧困)と考えられます。

高報酬の仕事などで貧困から抜け出せればまだいいのですが、デフレというのは生産過剰ですから人余りです。
どんな労働市場でも労働力の供給が過剰になっていく傾向は変わらないと考えられます。
そうすると報酬はどうしても下がっていきます。

そういった背景を誰もが背負わざるをえない以上、不利な契約を結ばざるをえなかったり、過重労働が当然であると思い込んで健康や自由を失ったりして、最悪過労自殺を選ぶような場合も当然多くなると考えられます。

消費者の購買力が不十分なまま、日々増大する機械生産能力や他の労働者とのコスト切り詰め競争を強いられている以上、貧困は避けられないと考えられます。
賃金以外の通貨の給付を認め、新たに通貨を発行して流し込むことが必要と考えられます。

デフレは戦乱をもたらす

貧困は個人にとっても死活問題ですが、社会的にも様々な致命的な問題をもたらすと考えられます。
貧困は教育格差による格差の固定化や余裕のない暮らしから起こる家庭問題、治安の悪化などをもたらし、より深刻になれば過激思想やテロリズム、犯罪組織の温床にもなると考えられます。

これが広範囲に広がってくると世情がいよいよ不安定化して戦乱が起きると考えられます。
例えば1930年頃の世界的なデフレ恐慌から二次大戦への流れがそのような流れだったと考えられます。

当時の通貨システムは銀行主導の金本位制というもので、金の量に通貨量が縛られるシステムでした。
従って当時は十分な通貨を供給できず、デフレや緊縮財政を国民に押し付ける結果をもたらしていました。
ここで既に慢性的かつ大きな失業問題があったと考えられます。

そこにアメリカ発の巨大なバブル崩壊が発生したため通貨量が激減し、デフレによる失業問題がさらに深刻化したと考えられます。
当時の失業率は20%を超えていたらしく、労働者の扱いはひどかったようです。
日本の東北では凶作もあって飢餓が発生し、これが2.26事件(青年将校によるクーデター未遂)の一因になったとも言われています。

そして各国の軍事政権の台頭などを経て世界大戦が再び起きます。
戦争は巨大な需要(戦争特需)と考えられますから、デフレによる生産過剰のはけ口にはある意味で適していたと考えられます。
過剰生産力を受け入れる戦争特需が好景気の要因の一つとも考えられます。

通貨発行BIは生産過剰時代最大の貧困対策

デフレは生産能力に対する消費者への通貨供給の不足から生じます。
現在は基本的に労働力を売ることでしか大部分の消費者が通貨を得ることはできない仕組みですから、これでは無人生産の時代への対応は難しいと考えられます。

デフレで過剰な生産力があるということは労働者にとっては競争相手がとにかく一杯いるということですから、労働力を高く売ることがなかなか出来ません。
無人生産も拡大していくと考えられますから、労働者が得られる報酬は長期的に少なくなっていく傾向が続くと考えられます。

新たに十分な量の通貨を発行するのも勿論ですが、通貨の供給ルートとして直接給付(BI)の形を取り入れていくことが必要と考えられます。
通貨発行とBIによる消費者への通貨供給は余剰生産能力を貧困層の人々に分配させることを可能にしますから、貧困は減少すると考えられます。

それと同時に購買力の増加により企業は儲けが増え、労働者はよりよい労働環境と報酬で働くことができると考えられます。
基本的にどんな立場にとっても今以上の得しかないと考えられます。

子供は飢えることが少なくなり、消費者は生活物資が買えるようになれば無理に働かなくてもよくなると考えられます。
親子の時間も増やすことが出来るでしょうし、子育てが負担ならサービスを利用して軽減することも可能になると考えられます。

働かなくてもいくらか生活できるとなれば身体的にも精神的にも楽だと思います。
生活の心配なく休養もとれますし、気力体力が充実すれば今まで目が向かなかったものに興味をもつこともあるのではないかと思います。

2017年7月18日火曜日

富の分配の上限

本記事の要旨


・デフレでは消費者への通貨供給(需要)、インフレでは生産能力が富の分配の上限
・デフレでは消費者への通貨供給(BI)強化、インフレでは生産強化を行う
・賃金だけによる需要創出の限界とBIの役割

デフレでは需要が、インフレでは生産能力が富の分配の上限

下の図は消費者への通貨供給(需要)と生産能力、そして富の分配の関係についてのイメージです。
赤い○が消費者への通貨供給(需要)の大きさ、青い○が生産能力の大きさ、黄色は実際に分配される富(生産財)の大きさ、青色の塗りつぶしは生産余剰(デフレギャップ)の大きさ、赤色の塗りつぶしは需要余剰(インフレギャップ)の大きさを表します。
この図の3つの例では生産能力は全て同じ規模で、消費者への通貨供給の大きさ(需要=購買力)だけが違います。
理想的なのは一番上の図、生産能力が最大限に分配され、なおかつ消費者への通貨供給の過不足が小さい状態だと考えられます。

インフレギャップ(消費者への通貨供給>生産能力)
インフレギャップが存在する状態では、その大きさに関わらず富の分配は最大化されると考えられます。
この状態では生産能力の上限が分配できる富の上限ですから、これ以上通貨供給しても更なる富の分配は出来ないと考えられます。
富の分配を増大させるには生産能力の強化が必要と考えられます。

デフレギャップ(消費者への通貨供給<生産能力)
デフレギャップが存在する状態では、消費者への通貨供給(需要)の大きさで富の分配が制限されると考えられます。
この状態では通貨供給の大きさが分配の上限になっているので、生産能力を強化しても更なる富の分配は出来ないと考えられます。
富の分配を増大させるには通貨供給の増大が必要と考えられます。

この図では生産能力は全て同じ大きさですが、デフレギャップが存在する状態だけが消費者への通貨供給(購買力)の不足によって本来の生産能力未満まで富の分配の大きさを抑え込まれていることが確認できます。

インフレでは生産強化、デフレでは消費者への通貨供給を

消費者への通貨供給と生産能力が両方増大して初めて富の分配が増大すると考えられます。
ですから施策の方針としてデフレでは消費者への通貨供給の増大を採り、インフレでは生産能力の増大を採るのがいいと考えられます。

消費税はインフレギャップ発生で初めて出していい選択肢
消費税は消費者への通貨供給(需要)を縮小させることと同じなので、インフレギャップ(需要余剰)が存在する時に需要の増大を抑え込むのには適しているかもしれませんが、デフレギャップ(需要不足)が存在する状態で導入すれば富の分配が小さくなってしまうと考えられます。

実際に個人消費などは消費税の導入や増税によって下がっていることが確認されていますから、現状の日本国経済に消費税は全く必要ないと考えられます。
これ以上の増税を凍結するのは勿論、一刻も早く減税か廃止をすべきだと思います。

現在のデフレの進行とBIによる解決のイメージ

下の図はデフレが進行した状態とその解決のイメージです。
凡例などの読み方は先程の図と同じです。
一番上の図ですが、デフレギャップが存在する状態では消費者への通貨供給(需要)が富の分配を制限しています。
ここから生産能力だけ増大した状態がデフレが進行した二番目の図の状態と考えられます。

この時GDPなどを見ると経済的な規模は変わっていないように見えると思います。
消費者への通貨供給(需要)の大きさがボトルネックになっており、ほとんど変わっていない状態だからです。
AIが管理する無人工場などが登場しているのに生産能力が増大していないということは考え難いと思います。

消費者への通貨供給の規模がそのままで生産能力が増大すれば、その分デフレギャップが増大します。
デフレギャップの増大は貧困等の問題の深刻化を意味すると考えられます。

この解決には通貨発行BIによる消費者への通貨供給が適していると考えられます。
大事なのは生産能力に合わせて消費者への通貨供給を調整することです。

賃金による需要創出の限界とBIの役割

AIが管理する無人工場など、生産能力増大と人件費削減を両立するような生産技術が発達しています。
賃金経由の通貨供給だけではデフレギャップを埋めることが困難になっていくことが予想されます。

その問題とBIによる解決のイメージを下の図で示してみました。
読み方は前の図と同じですが、ここでは生産能力を無人生産能力と有人生産能力というものに分けています。
賃金コストを払ってするような生産を有人生産、それ以外の生産を無人生産としました。
賃金による富の分配の限界
上の図ですが、賃金だけで分配を行う場合は無人で生産される富の分を分配することが出来ませんから、賃金による消費者への通貨供給の限界は有人生産能力の大きさ以下ということになると考えられます。

純粋に人にしか出来ない富の生産がこの先どれ位あるのかはわかりませんが、人による生産の大きさは無人生産によって今後押し下げられていくと思います。
相対的に無人生産能力が増大するだけでなく、有人生産も代替していくからです。

この場合、無人生産能力が増大し続ければそれだけでデフレギャップが拡大します。
賃金経由だけで通貨を注ぎ込んでも無人生産分のデフレギャップの解決は極めて困難と考えられます。

BIによる富の分配とデフレの解決
デフレの解決には無人生産分の富を分配できるだけの消費者への直接の通貨供給が必要と考えられます。
これは需要創出に即効性があるだけでなく、賃金による消費者への通貨供給の限界を解決するためです。

この無人生産分の富の分配がBIの主な役割だと思います。
通貨発行BIによって消費者へ直接通貨を供給し需要を増大させることで、デフレギャップ分の富を分配することができるようになると考えられます。
無人生産が有人生産を代替していく結果、技術的失業によって人件費が下がっていくことがあってもBIによるカバーが可能になります。

2017年7月13日木曜日

デフレの影響:給料

本記事の要旨


・デフレの影響で給料が安い
・自動生産技術が味方になるかはBI次第
・BIが労働を助ける
・通貨発行によるBI導入へ働きかける必要


デフレで苦しむ賃金労働者

ここでいう給料は企業単位・個人単位に限らず、経済で払われる人件費全体のことです。
給料が上がらなかったり下がっていくことは、通貨発行と通貨分配不足によって需要(購買)が不足するために起きることだと考えられます。

財やサービスを十分供給する能力があっても、消費者全体の通貨不足(需要不足)によって十分に財やサービスが届かない現象をデフレと言います。

生産能力が需要に比べて過剰ということは労働市場では人が余る状態なので、大なり小なり労働力の買い叩き(ワーキングプア)や劣悪な労働環境(ブラック労働)へ遭遇することになります。

売上を上げるには消費者の手元に通貨が十分に分配されてる必要があります。
消費者が十分な通貨を持っていなければ、企業は売上が上がらないので給料を上げることもできません。
今のシステムでは賃金労働者が消費者でもあるため、給料が上がらなければ消費者の通貨も増えず売上も上がりません。
この流れにいくつか問題があると思います。
  • 消費者は賃金労働契約でしか通貨(おカネ)を入手できない
  • 富の生産に労働が寄与する部分が少なくなってきている
  • 通貨の発行と分配が生産能力に対して充分でない(デフレ)
  • 賃金労働は通貨発行と関係しない
賃金労働者の待遇を改善するには賃金労働から一旦離れ、通貨の発行と分配の問題にアプローチして十分に通貨供給をする必要があると考えられます。
私は通貨発行によるベーシックインカム(BI)が施策として適していると思います。

自動生産技術が味方になるかはBI次第

先述した問題のうち、富の生産に労働が寄与する部分が少なくなってきているという問題に関わりますが、自動生産技術(特に人工知能分野)が無視できない発達をしているという話題があります。
日本では10年か20年で労働人口の5割が機械に代替可能になるという試算もあるそうです。

AIが管理する無人工場の設置に向けて世界的に産業界が動いているという報道も確認できます。
実際の運用の細かいところはわかりませんが、少なくとも人件費は従来に比べて相対的に縮小していくと考えられます。

生産性の向上によって生産に人が不要になっていきますから、起きるのは労働者不足ではなく労働者余りです。
こうした技術的失業と呼ばれる働きによっても賃金は低下圧力を受けると考えられます。

こうした問題に対して無為無策なら、生産能力が増大する一方で分配だけが不足するデフレ状態が深刻化し、今以上の貧困が確実にやってくると考えられます。
賃金によらない通貨発行・通貨分配(ヘリマネ・BI)を実現できれば安定した経済が実現出来ると思います。

ベーシックインカムが労働を助ける

通貨入手を賃金労働契約だけに依存せず安定させるシステムとして、また需要を底上げする政策としてベーシックインカム(国民配当)が適当だと考えられます。

税負担などは基本的に必要ないと考えられます。
財源としてデフレギャップ(生産能力と需要の差)が埋まるまで純粋通貨発行すればいいからです。

ただでおカネをもらったら働かなくなると言われることのあるBIですが、働きたいか働きたくないかに関わらず利点が多いと考えられます。
例えば以下のようなものです。
  • 無条件収入が保障されることで多くの人は無理に働く必要がなくなる
  • 労賃契約を結んで稼ぎたい人にとっては他の労働者との競争が緩和されいい条件を取りやすい
  • 労働してもしなくてもいいという自由によって雇用主と対等な契約交渉が可能になる
  • BIによって需要が増大し売上が上がるので賃金も上がる
他にも利点が想像できます。
賃金労働≒生活が現代人のスタイルだとすれば、こうした変化は生活全般へ伝播すると考えられるからです。
  • 好きなだけ家族や友人との時間が取れる
  • 子供をサービス等に預ける余裕ができるので子育て負担を分散できる
  • 無理に大きいストレスに向かわなくていいので心身が健康的に
  • おカネや時間に余裕が出来て趣味に没頭できる
  • 収益性にこだわる必要が小さくなりボランティア活動等の幅が広がる
働きたい人にとってもそうでない人にも、今以上に心地が良いのではないかと私は思います。
基本的に自由度が高まりやりたいことがやれるようになると見ることが出来ると思います。
生活のための賃金労働から開放されて、純粋に自分の満足のためとか誰かの役に立ちたいとかの動機で行われる労働が標準的になるかもしれません。

昔の日本で元禄改鋳という事実上の需要増大政策が行われたそうですが、この時の芸術・学問・生活等の発展は元禄文化として高く評価されています。
BIはこうした文化を継続的に支えることになると考えられます。

産業界は元々生産性の向上が使命のようなところがあるので、雇用など深く考えずに技術研究や生産能力の増大に邁進できると考えられます。

通貨発行によるBI導入へ働きかける必要

収入は基本的に賃金労働契約であるべきだと考える世論の傾向は未だ強いと思います。
実際にそうして生活している人がほとんどだからです。
一方で真面目に賃金労働に従事していても生活が苦しくなる一方だと感じる人も多いのではないでしょうか。

それはデフレの影響だと考えられます。
現在は需要に対して生産能力が過剰で人手余りです。
それが給料が上がらない主要因だと考えられます。
デフレによる貧困が今現在多くの人が苦しみとして直面している問題だと思います。

デフレは通貨の発行と分配の不足から起きますから、解決には労働から一旦離れて通貨発行システムに働きかける必要があると思います。
現在の仕組みでは通貨は発行システムによって発行され、経済活動に使われる中で企業が売上げ、労働力や成果と引き換えに賃金を渡すという賃金契約によって労働者の手元に流れてきます。

この流れで通貨量を増やす事ができるとしたら発行段階です。
生産物を売上げたり賃金を得るというやり取りの中に流通通貨量が増える要素はほぼありません。
ですから通貨発行が必要です。

賃金も自動生産技術等によって下落圧力が強まっていく状態です。
賃金が消費を制限してしまえば売上も減ると考えられます。
ですから消費を支えるBIが必要です。

初めは月1万円など少額から開始し、実際の影響を見ながら増額していくのがいいかもしれません。
少額であっても導入されればその効果がたちまち理解されるのではないでしょうか。

2017年7月10日月曜日

デフレを克服する必要性

本記事の要旨


・デフレ克服が必要
・デフレは通貨不足による富の分配不足がもたらす貧困
・デフレスパイラルに関係ない人はいない
・通貨発行とベーシックインカムでデフレを克服

デフレ克服が必要

どうすれば私を含めた多くの人の生活が良くなるのでしょうか。
現代人は物質的に豊かだと言われても、その恩恵を十分に受けているという実感を持つ人はあまりいないのではないでしょうか。
日々の薄給の賃金労働に忙殺されて時間もおカネもないという話は年々増える一方で、今では珍しくない話になってしまったように見えます。

私を含めた多くの人々が苦しい生活から抜け出し、よりよい生活に至るために何を目標として考えればいいのでしょうか。
私はデフレ(デフレーション)の克服が一つの目標と考えています。

デフレは通貨が十分行き渡らないから起きる貧困

ここでいうデフレは生産能力(経済全体の財やサービスを供給する能力)に対して需要(実際の財やサービスの購入)が少ないことです。
この財やサービスは普段生活している中でおカネを払って得ているものです。
例えば1000兆円分の財やサービスを生産できる生産能力があっても、需要が500兆円ならデフレと考えます。

生産した財やサービスを消費者の手元に分配するためには、消費者自身の手に通貨(おカネ)があらかじめ何らかの手段で分配されていることが必要です。
ですから十分な財やサービスを生産する能力があっても、通貨が十分に行き渡っていなければ消費者には届きません。
財やサービスが必要な人々に届かないならそれは貧困を意味すると考えられます。

デフレスパイラルに関係ない人はいない

消費者に十分な通貨がなければ企業の売上も伸びませんから賃金労働者の給料も伸びません。
今の世の中では賃金労働者はほぼ消費者と同一ですから流通通貨量が不足すれば賃金減→消費減→売上減→賃金減のデフレスパイラルが発生します。

将来不安等から家計の貯金や企業の内部留保(企業の貯金)が増え、通貨の流通量が減少します。
こうして無為無策のままならただデフレが深刻化していきます。

消費税などは通貨の流通の環から通貨を奪っていきますから流通通貨不足の深刻化に拍車をかけていると言えます。
一刻も早く減税なり廃止なりすべきだと思います。

私は既に大半の人がデフレの渦中にいると考えています。
新聞やテレビなどはデフレの危険を小さいか無いものとして報道する傾向がありますが、これをまともに受け取っていたらいつまで経っても生活が良くなるとは思えません。

通貨発行とベーシックインカムでデフレを克服

デフレを解決するには通貨を新しく発行して消費者に配るのが有効だと考えられます。
これはヘリコプターマネー・ベーシックインカム(BI)といった通貨発行・通貨分配方法です。
内容はとてもシンプルで、単純発行した通貨を直接全員に給付するだけです。
そうすることで需要が増大しデフレが解消に向かうと考えられます。

BIへの懐疑や反対の意見にはこういったものがあるようです。
  • 収入は労働によるものでなければならないのではないか
  • 富は労働がなければ生み出されないのではないか
  • BIは労働を否定する仕組みではないか
  • ハイパーインフレなどの弊害を引き起こすのではないか
  • そもそも財源がないのではないか
  • 誰かが損をするのではないか
  • 導入して混乱が起きるのではないか
これらについては後日別の記事で言及していく予定ですが、私は基本的にやり方を間違わなければ大丈夫ではないかと考えています。

デフレかBIか

私が考えるデフレによる現状の問題点を挙げます。
そもそもなぜ多くの人の生活が苦しくなっているのかといえばデフレを放置してきたからだと思います。
  • 薄給や過重労働等の労働問題が深刻化
  • 企業経営が悪化
  • 貧困が深刻化
  • 貿易摩擦が深刻化
  • 戦争リスクが高まる
  • 多くの人が富を受け取る機会を失う
  • 出生率が下がる
このように、私はデフレが背景にある問題は多岐にわたると考えています。
つまりBIによって通貨発行と通貨分配を適切な状態にすることで、これらの問題がぐっと小さくなると考えています。
こじつけの範疇を超えるものではないかもしれませんが、私の考えとしてこちらも言及していく予定です。

BIを導入しないという道はない

私はBIというのは需要を効果的に増大させ生産と需要のバランスを取り、生産しうる富を最大限に分配し活用するためのものだと考えています。
どれだけ生産能力があるかは推測になりますが、少なくともデフレによる現在の貧困などの深刻な問題が起こっていると考えられますから、そういった問題がある限りBIを導入しないという道はないと思います。

何をやるにも税収を確保してからとかいうのは、まず問題のスケール(規模)から取り違えているのではないかと思います。
今のただでさえ不足している通貨を右に左に移し替えてもデフレの解決は困難です。
必要なのは通貨発行とBIだと思います。

2017年7月7日金曜日

経済異聞録はじめました

本記事の要旨


・自己紹介
・本ブログを始めた経緯
・本ブログの方針



自己紹介

初めまして、この度「経済異聞録」というブログを立ち上げました。
簡単に自己紹介します。

私は1980年代に東北で生まれました。
夏はわずかな間だけ暑く、冬はひたすら雪に悩まされる街です。

新卒採用の時期にリーマンショックが発生し就職に失敗、中途採用として測量会社に勤めました。
その後鬱を患い、体調不良などもあり何度か長期休養を取りました。
これを書いている時はアルバイトで生活しています。

幼い頃から暗く余裕のない顔をする家族や世間が何に追い詰められているのだろうと不思議に感じていましたが、成人する頃にどうやらデフレという経済現象が国をジワジワと追い詰めている、これを解消しなければ自分どころか国にも未来はないと理解するようになりました。
それからはデフレを解消するためにはどうしたらいいのかを探し続けています。

経緯

私はマスコミやテレビ等の一方的かつ偏向的な報道や論説に強い不信感を覚えており、主にインターネットや書籍を通してデフレを解消する方法はないかと探し続けています。
今まで様々な人々が伝えてきた知識や知恵に触れることができた幸運のお陰で、方向性らしきものを自分の考えで定めることが出来るようになってきました。

しかし未だデフレを解消するには至っておらず、これまでも長い時間がかかってしまいました。
そこで先人の知識や知恵を自分なりに書き留め、誰かに引き合わせることでよりよい経済への進歩を加速させることが出来るかもしれないと考えました。
本ブログはそうした動機で始めたものです。

方針

ここでは私が経済について見聞きしたことや、それらについての意見等を忘備録的に書いていくことになると思います。
異聞録の名の通りマスコミやテレビ一般では報道されないような角度から経済を見ていくことが多くなるのではないかと思います。

経済を専門に学んだとかいうことは全く無く知識などは気ままな独学からなので、本ブログの主張と違う主張は当然のようにありますし、主張の変節や取消のようなこともやると思います。
私は自分の考えを主張はしますが、誰かの判断まで干渉することはありません。
最後に決めるのは自分です。

力不足で拙いところも多々あるかと思いますが、読まれた方の一人でも日々の生活で新しい視点を持って気持ちが少しでも楽になれるように、そしてよりよい選択が出来るように何かしらお手伝いできたとなれば何にも勝る至上の幸いです。

執筆者